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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第64章 霞屋敷のふろふき大根には柚子の皮が乗っている / 🌫️


🐿️

「いえ……皆さんと……それから……両親に救って貰った命です。助けて、いただい…て」

言葉が続かなかった。
少しだけおさまっていた涙が、再びゆずはの両の瞳からぽろり、ぽろりと、流れて来る。


「嫌…!!お父さん、お母さん、ねえ起きて…! 置いていかないで!!!」


ゆずはは、ようやくきちんと声を発する事が出来た。
両親が亡くなった姿を見た直後の彼女は、あまりの衝撃で声が出なかった。

二人共、昨日までは何事もなく生きていたのだ。僅か五十人程の小さな村だった為、皆(みな)が家族。

ゆずはは、細やかながらもあたたかな環境で過ごしていた。

それはありふれた平凡かもしれない。しかし、彼女は懸命に真っ直ぐ生きていたのだ。


「あの子は本当に可愛いよねぇ。俺、嫁に出せるのかなあ」

「ゆずははもう十四歳ですよ? そろそろ子離れしなきゃ…」

「そうは言うけどさ、我が家の一人娘だよ? 君も難産だったじゃない。あの時凄く肝が冷えたんだ。ひょっとして自分は一人になっちゃうのかなって…気が気じゃなかったんだから」

「あなたは、本当に心配性ですよね」


村が鬼に襲われる前夜。
目が覚めたゆずはは、厠(かわや)で用を済ませた帰りに二人の話を廊下で聞いた。


『お母さんの言う通り。お父さん、心配しすぎだよ…』


明治が数年前に終わり、今は大正の世。
人が帯刀(たいとう)する事は無くなり、殺生もほとんど起こらなくなった。

同じ村の住人が街に出た際、刀で斬られて死んだ。そんな事も耳にしなくなった矢先の出来事だった。


「うっ…ひっ…おと、さ…おか…さ…」
「……」


全身を震わせ、泣きじゃくる彼女の傍らにそっと寄り添う煉獄。
先程からゆずはへ伝えようと、考えていた言葉を飲み込んでいたが、腹をくくる。

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