第63章 Valentine masquerade / 🎴・🌫️

「いつも思うけど……」
「んっ、あ……」

脇の下から腰、それから臀部をなでる彼の両手は、とても優しい。

「君の肌って凄く触り心地良いよね」
「そう、かな……」
「うん」

首、鎖骨、みぞおち。無一郎くんの唇が触れる度に体が喜ぶ感覚。
好きな人に体を触ってもらう事が、こんなにも心地よいのだと知ったのは彼と初めて体を繋げた時だ。

上質な映画や音楽に触れた時に感じる高揚感、嬉しさで胸がいっぱいになる感覚。
それらを与えてくれるのは、今私の目の前にいる無一郎くんだけ。

「今日いつもより濡れてない？」
「うん……そう、かも。ドレス着たり、無一郎くんの仮装見たり、美味しいご飯食べたりしたから」

「この部屋も非日常だもんね。俺もここがムズムズするもん」
「あっ……すご、いね」

彼が右手で握った物は、ピンと真っ直ぐ天井に向かって反り立つ肉棒だった。

「まあ君にキスするだけで、いつもここは硬くなるんだけどね」
「そう、なんだ」

「うん、そうだよ。好きな子に触れるんだから、当たり前。七瀬は？」
「うん……」

自分も無一郎くんとキスを交わすだけで、甘い欲が下腹部の穴から滲む。でも恥ずかしくてとても本人に伝えられそうにない。

「ちょっと、何で黙るの。俺だけ本音晒して恥ずかしいよ」
「ごめん、口に出すのは……ちょっと照れるな」

さっきから充分恥ずかしい事をしているのに—— ？

そんな意地悪な事を言いながらも、あたたかな口付けをくれる無一郎くんだ。

言葉と行動が良い意味で一致しない彼のこう言う所、私好きなんだよね。

ずるいと自覚しつつも、そんな事を心の中だけで思案する。その分、私は行動で示そうと彼の首にゆっくり両腕を回した。

「凄い、見て。俺の手こんなになったよ」
「もう…どうしていつも見せるのー？」

彼の人差し指にはきらきらと光っている、透明な液がたっぷりと付着していた。

「七瀬が俺ともっと気持ち良くなりたいって言うサインでしょ。嬉しいんだよ、こんなに反応してくれるのが」