恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第62章 Halloween masquerade / 🌊・🔥
「明後日までだったらキャンセル料もかからないから、義勇さん気が進まないんだったら大丈夫だよ。遠慮なく言って」
「いや、お前のその気遣いはありがたく受け取りたい。だからキャンセルしなくて良い」
「んっ、」
スッと七瀬に近づいた彼は、彼女をそっと抱きしめて額にキスを一つ落とす。
「渋谷を共に歩けと言われたら躊躇してしまうのが正直な気持ちだが、施設内であるなら許容範囲だ」
「ありがとう、義勇さん」
“やっぱり優しいな” と七瀬は恋人の背中に腕を回した。
線は細いが、つくべき所にしっかりとついている義勇の体躯。七瀬は彼の体がとても好みだ。
「去年の魔女も可愛かった。今年も楽しみにしている」
「私も! 義勇さんがどんな衣装を着るか楽しみだよ」
二人はまたキスをゆっくりと長く交わした。
★
「ここだね、ドレスハウス “ breathing(=英語で呼吸の意)” 凄く雰囲気あって良い感じ……」
「外観から凝っているのか……圧巻だな」
空港からタクシーに揺られて二十分弱。七瀬と義勇は一泊分の荷物を一つのスーツケースに詰め、目的の場所へとやって来た。
西洋の古城のような建物はゴシック様式だ。
尖頭アーチと呼ばれている尖ったアーチ、側廊屋根裏に隠されていたアーチを側廊屋根よりも高い位置に移し、空中にアーチを架けた飛梁(とびばり)。
それからアーチを平行に押し出した、かまぼこ型の形状を特徴とするヴォールトと呼ばれる建築様式で構成されている。
「チェコにあるプラハ城を参考にしてるんだって。中欧にも行ってみたいなあ。義勇さん行った事ある?」
「いや、ないな。中欧も良いが、俺は北欧にも行ってみたい」
「オーロラが見えるんだっけ? 義勇さんは寒い国と相性良さそうなイメージ。スウェーデンとかフィンランドとか……」