恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第2章 唇に甘い罠 / 🔥✳︎✳︎
長い親指が、私の唇に紅をさすように血をゆっくりと伸ばしていく。
「うむ。良い色になった」
そう言うと私の血がついた親指を自分の唇にもスッ……と塗った。
彼の橙色の爪紅(つまべに=マニキュア)がきらりと光る。
「これで君と揃いだな……とても綺麗な唇だ」
一旦離れていた掌が、再び私の左頬をふわりと包む。
そうして赤くなった彼の唇が、私の唇にゆっくりと押しつけられた。
「んぅ……」
「……はっ……」
2つの紅が1つに重なり、じわっと交わっていく。
彼にちゅっ、ちゅっ、と啄まれた後に舌を絡め取られていくと、左頬を大きな手で柔らかく撫でられる。
「あっ……」
体の真ん中が甘く甘く震えた。
「滑らかな肌だ……唇も甘い……」
彼に翻弄されていると、私の物なのか、血が喉を通った。
……苦い……
飲み込んだ後、頭がぼうっとしてくる。
何だろう、これ……私、夢を見ているのかな?
意識が少しずつ遠のく中、低くて甘い媚薬のような彼の声が耳と脳に響く。
「俺は上弦の参、名を杏寿郎。鬼狩りの少女よ。君の名は何と言う?」
end