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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第60章 feliz cumpleaños / 🎴・🌫️ ✳︎✳︎



七月上旬、夏が来る一歩手前。

私、沢渡七瀬は自室で大の字になって寝転んでいる。
左手に持った団扇(うちわ)をパタパタと仰ぎながら、自分の体に風を送っている所だ。


「梅雨の合間の晴れって爽快だけど、暑いんだよね……」

むくりと体を起こして少しだけ開けた襖の隙間からは、庭が見える。


今は午前十時半。ほんの二時間前までこの家の主である無一郎くんと朝の稽古をした名残が目に入った。

三つある鍛錬用の器具を隠の本田さんが取り替えている。
彼女はここ霞柱邸専属の隠だ。


「倒れたら大変だから、この時期の日中は頭巾を外してね」


これは鬼殺隊の当主お館様の言葉だ。先月の梅雨入り後、日中の蒸し暑さで体調を崩す隠の人が続出したらしい。

心配したお館様が”夏期の日中は頭巾を外そう” と全隠にそんな思いやりの言葉を出した。


「本田さん、取り替え作業お疲れ様でした。私これ細かくして塵芥箱(じんかいばこ=木で出来た蓋付きのゴミ箱)に持っていきますね」

「七瀬さん。大丈夫ですよ! 私一人でいつもやってますから」

「一緒にやった方が早く終わりますよ〜。お茶を持って来たので水分補給をまずして来てください」

「ありがとうございます…ではお言葉に甘えて」


持っていた手拭いを彼女に渡すと、顔の汗を早速拭き始める本田さんだ。

頭巾を脱いだ彼女の髪は頭の上で一つに結びあげられており、なかなかの美人である。因みに恋人は同じ隠仲間なのだと言う。


お館様のお言葉がなかったらもっと倒れている隠は多かったでしょうね、と私の横で大きく感謝の気持ちを口にしながら、ゴクゴク…と麦茶を飲む彼女の横顔はとても綺麗だ。


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