恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第59章 左目に夜華(よばな)が咲く / 💎
〜継子(悲恋)エンド〜
空が茜色へと移り変わる夕刻の時間帯、宇髄邸に西の空から一羽の鴉が飛んで来る。
七瀬の鎹鴉のはやぶさだ。縁側に四人で腰掛け、雛鶴が天元の包帯を交換し終わった正にその瞬間の出来事だった。
「カァー!! 沢渡七瀬、死亡ー!! 刀鍛治ノ里へ向カウ途中、上弦ノ伍ト交戦中ニ死亡ー!!」
「えっ、何それ……」
「そんな、昨日の朝行って来ますって……挨拶した、のに?」
「嘘です!!七瀬ちゃんが亡くなるなんて!」
『マジかよ……』
遊郭任務で上弦の陸と死闘を繰り広げた天元は、雛鶴・まきを・須磨の四人で帰還した。
彼は残念ながら左目と左手を欠損した為、柱は引退する事になってしまったが、皆(みな)が生きて帰った事に七瀬は大粒の涙を流した。
それが一週間前 ———
まきをが言ったように刀鍛治の里へ刃こぼれしてしまった槍を修復して来ると、昨日見送ったばかりだ。
鴉の話によると、背負って貰っていた隠を何とか逃し、自分は状態が悪い短槍で戦ったのだと言う。
「何で……刃こぼれしている時に限って、上弦となんて会っちまうんだよ」
天元は「くそっ!」と、右の拳で自分の膝をやや強めに当てた。
突然の継子の訃報。鬼殺隊に所属している限り、死とは無関係でいられない。四ヶ月前に炎柱の煉獄杏寿郎が殉職し、自分も生死の境を彷徨ったが、三人の嫁と何とか生きて戻った。
それなのに ——
「はやぶさ、報告あんがとな。お前も辛かったろ」
「ハイ……オ気遣イ……アリガ……」
天元が自分の左肩に乗っている鴉の嘴(くちばし)を撫でると、彼は体を震わせて涙をポロポロと流した。
雛鶴・まきを・須磨は現実が受け止めきれず、しばし呆然としていたが、須磨が泣き出したのをきっかけにまきをと雛鶴も静かに涙を流し始める。