恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第59章 左目に夜華(よばな)が咲く / 💎
「天元さんは天元さんです。すみません、私何をどう思ったかよく覚えてないのですが、慈悟郎さんとは全然似ていなかったです」
「おう、俺は祭りと派手を司る宇髄天元様だからな! あのくそじじい……って、悪い。お前の大事な育手に言う事じゃねーわ」
『くそじじい』は自分の心に留めるべき五文字だったな、と天元は少しばかり後悔をした。
「ふふふ、実は私も鍛錬中何回も同じように思ったんですよ。慈悟郎さんはとにかく飴と鞭の緩急が上手で……あれ?これ天元さんもそうだから、やっぱり ——— んっ、ちょ……」
ちうう、と七瀬の言葉は天元の口付けによって飲み込まれた。
唇を離した直後、天元は「おもしろくねぇ!」と再度憤怒した様子を見せる。
「 隊士としての基本は育手のじーさんが導いたかもしんねーが、筋力つくように稽古内容を提案して、お前が強くなるよう導いたのは俺だ! 」
「はい、その通りです……」
「沢渡七瀬と言う隊士の事を、鬼殺隊内で誰より理解しているのも俺だ! 」
「ありがとうございます……そんな風に言って貰えて嬉しいです」
はにかみつつも素直に言葉を発した七瀬の反応に気をよくした天元は、彼女の頭をポンポンと柔らかく撫で、そして……
「今日は男としては認めてもらった。これは間違いねえ! だから今後はお前の師範としても、必ず認めてもらう!!」
「はい、わかりました。私も頑張ります……」
「頼むな…でもその前に今日は恋人になったお前をたくさん感じさせてくれ」
「んっ、天元さ、いつもいきなり……!」
「諦めろ、七瀬が可愛すぎんだ」
再び彼女の唇を天元が熱く、深くまさぐり始めた。この日の夜 —— 二人は正真正銘恋人同士となる。
それから一夜が明けた次の日の早朝の事だ。
「おはようございます天元様、入りますよ。包帯を交換しても……あら」
襖の外から声をかけても、なかなか外に出て来ない事に疑問を持った雛鶴が静かにそこを開けると、目を覚ました天元とは逆に瞳を閉じたままの七瀬が体を寄せ合って、布団に横たわっていた。
「わりい、雛鶴。もう少し寝かせてやってくれ。やりすぎちまった」
宇髄家の新しい朝が、この日から始まった。
恋人(幸せ)エンド
〜終わり〜