恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第47章 B1のサンライズ / 🔥
グルメ雑誌部の扉を開けた途端、怒号が聞こえる。
何かと思い視線をやると、沢渡さんが上司であろう男性に叱責されていた。
はい、申し訳ありません…と謝罪をしつつも涙は見せない。そんな何処か凛とした姿勢が印象的だった。
それから通勤時、社員食堂、退勤時と見かける度に彼女を目で追っていた。
初めて見た表情とは違い、心から嬉しそうに笑う沢渡さんが気になったからだ。
そんな折 ———
俺が所属している校閲部の社員の1人が、病気療養で3ヶ月休みたいと申し出があった。
むうう、これから年末にかけて仕事量が増える時期にこれは厳しい。ダメ元で他部署にヘルプ要請をかけた所、とある部署から返答が届く。
彼女が所属しているグルメ雑誌部からだ。
3ヶ月だけで良いなら、1人派遣出来ると言う。名前を聞いて本当にこんな事があるのかと驚いた。他でもない、沢渡さんが指名されたからだ。
元FWの嗅覚が告げる。これは間違いなくチャンスだ、決めろ!と。
考える間もなく、了承の返答をグルメ雑誌部に送る。
これが彼女がうちの部署に来た経緯だ。
「あ!伊東選手!私彼が推しなんです」
沢渡さんと通話しながら、俺はとある人物から届いたメッセージを開く。差出人はその I Jだ。
【メッセージ遅くなってごめん!お陰様でGL突破出来ました。決勝Tも頑張るんで、応援よろしく。帰国したらまた食事行きましょう】
テレビ画面に目を向けると、背番号14が大きく映し出されていた。
頑張れ、I J……!!
「いよいよ始まりますね、今夜も応援頑張りましょう!」
「うむ!今日もブラボーが聴けると良いな!」
12月6日、時刻は午前0時。キックオフの時間がやって来た。
【日本のW杯史上初ベスト8へ向けて、夢の挑戦が始まりました。ここからまだ見ぬ高みを目指して、まずは大事な90分間です。前回準優勝国のクロアチアと言う壁を、果たして超える事が出来るのか。それでは本日のスターティングメンバーをご紹介します。基本システムは……】
end.