恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第2章 唇に甘い罠 / 🔥✳︎✳︎
「はあ……はあ……」
私は必死で森の中を動き回る。
今夜は運が悪い事に、上弦の鬼に遭遇してしまった。呼吸を使って逃げるだけで精一杯の状態だ。
まずいな……型を連発したから足がずしっと重くなって来ている。
「そろそろ観念したらどうだ?……君は俺から逃げれないぞ」
金髪の鬼が一瞬で私と間合いを詰めて来た。
………しまった!!
咄嗟に呼吸を整える。
「雷の呼吸——」
参ノ型を放とうとするが、間に合わない!
鬼の爪に日輪刀を弾かれ、彼の手に右手首を掴まれてしまう。
そしてそのまま近くの木にトン、と優しく押し付けられたかと思うと、ふわっと5本の指を右手に絡められた。
人間の手とは少し違う感触が掌に染み込んでいき、尖った爪先が手の甲に当たる。
小さな私の手は鬼の大きな手に容易く捕らえられてしまった。
『逃げなきゃ……』