恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第45章 4年後の茜色へ / 🔥✳︎✳︎
令和××年3月上旬のとある週末 ———
『ん……朝かあ』
七瀬はベッド近くのローテーブルに置いてあるスマホに手を伸ばした。画面をタップすると「5:10」の数字が目に入り、彼女は思わず笑顔になる。
時間の確認が終わった七瀬は、至近距離にある肌色の温もりに、裸の自分の体を隙間なく寄せる。
そうして、右頬を規則正しいリズムが聞こえる場所へとぴったりくっつけた。
ドク、ドク、と熱く響く鼓動はいつも彼女の心を奮い立たせてくれる。
『この音聞くだけで元気になるなあ。よし、寝顔も見ちゃおう』
ゆっくりゆっくり顔を上げた先に、七瀬が望んだ物がある。
目鼻立ちが整った小作りの顔の周りには、ふわふわとした肩までの、そしてやや癖がある金髪が視界に入った。
普段凛々しく上向きになっている眉毛は下向きになっており、やや幼い印象を受ける。
『こないだ試したらやっぱり乗ったんだよね。つまようじが』
閉じられた双眸周りには、びっしりと生え揃った濃くて長いまつ毛。
『ビューラーしなくても、いつも上向きにくるんとしてるし。本当、羨ましいなあ』
彼女は口元に笑みを浮かべ、目の前の恋人の両頬をそうっと包み込んだ。
「どうした?まだ早朝だろう……」
瞬間 —— 低く、包容力がある声が掠れ気味に発せられた。彼の瞳はまだ閉じられたままだ。
「はい……時間見たら数字が杏寿郎さんの誕生日で。ちょっと幸せ気分を味わっていたんです」
「そうか…しかし、七瀬。俺はまだ君とこうしていたい。もっとこちらに来い」
「んっ、もう充分近いですよ」
更に密着する互いの体。七瀬の両足は彼の足で挟まれてしまい、ほとんど身動きが取れなくなった。
「杏寿郎さん」
「何だ?」
名前を呼ばれた彼の双眸がぱちりと開く。そこには2つの朝日が今日も昇っていた。