恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第12章 明けない太陽の世界へ / 🔥✳︎✳︎
「ん……」
ゆっくりと目を開ける。
目の前には大好きな恋人の顔があった。
「起きたか?」
「うん……」
「体は……大丈夫そうだな」
「うん……」
私はそうっと口の中を触ってみる。さわり慣れない牙があった。グッと指を押すと、ジワッと血が滲む。
でもあっと言う間にその傷も塞がってしまう。
手に視線を向けてみれば、橙色の爪は先が鋭く尖っていた。その長い爪を試しに触ってみると、とても硬かった。
目はどうなっているのだろう。
私は昨日、杏寿郎の血を体に取り込んで鬼になった。もう太陽の光が浴びれないし、眠らなくても良くなった。
さっきまで目を閉じていたのは彼の血を体に入れた時に強い衝撃で気を失った為。
そう、私は人間ではなくなった——
寂しい思いはもちろんある。けれど、愛する恋人と一緒に生きていくと決めた。だから後悔はない。
「どうした?」
目の前の赤い瞳が私を心配そうに見ている。大きな手が私の頬を優しく撫でてくれた。