恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第40章 大正、令和、時を駆ける〜ヒノカミ〜 ① / 🎴
青い稲光が自分の周囲にいくつも現れる。
「雷の呼吸・壱ノ型」
バリッと空間がひび割れるような音。
「——— 霹靂一閃」
左足で地を蹴り、雷刀を抜刀した。
「七瀬 —— !!」
炭治郎の声が聞こえたかと思うと、目の前の景色がぐにゃりと歪み、私は一瞬だけ吐き気を催した。
★
『本当に来るんだろうか』
今俺は蝶屋敷に向かう森の途中で、令和の時代を生きている沢渡七瀬を待っている。
あの時善逸と一緒に見つけた市松模様の物体は”すまーとふぉん”なる物で、めっせえじや電話と言った通信……伝達手段が交わせるとの事だった。
時刻は午後6時。これから任務だ。今日は満月。ぽっかりと綺麗な丸の形をした月が自分の頭上に浮かんでいる。
バチッ バチッ——
な、何だ???
自分が立っている場所から前方5メートル先の空間がぐにゃっと歪み、人の影がゆらりと現れた。
「うわっっ!!」
ビュンッと風を切るように現れた人影をどうにか避けた俺はくるんと後ろ向きに回転した…が、両の足でどうにか踏みとどまった。
顔を右側に向けると善逸が霹靂一閃を放った時と同じように、見慣れた姿がそこにある。青い稲光がようやく落ち着くと、俺のよく知る——-でもどこか違う雰囲気を見に纏った異性がこちらを振り返った。
「たん……じろう??」
俺を普段呼ぶ調子と変わらない様子で彼女はそう声に出した。
「七瀬……なのか?令和……の」
うん、と頷く彼女。
こうして大正を生きる俺、竈門炭治郎と100年以上先の未来からやって来た沢渡七瀬の濃密で決して忘れる事が出来ない3日間が始まった。
②へ続く→→