恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第40章 大正、令和、時を駆ける〜ヒノカミ〜 ① / 🎴
キーンコーンカーンコーン………♪
1年筍組の教室に授業終了のチャイムが鳴り響く。これから理科室に移動して、伊黒先生の化学実験だ。
私は隣の席に座っている炭治郎の準備が終わるのを待っている所。
「あれ?おかしいなあ……」
頭を何度も傾げながら机の引き出し、通学用のリュックを覗き込む…と言った行動を数回繰り返す彼。
どうしたの?と聞くと、スマホが見当たらないとの事だ。
「えっ!大変じゃない!ちょっと私、鳴らしてみようか?」
「ごめん、頼めるか?」
「もちろん!」
自分の制服の右ポケットに入れていたスマホを取り出し、履歴から炭治郎の名前を表示した私はそこをタップして、左耳に当てる。
「おかけになった電話番号は現在電波の届かない……」
コール音が鳴る事なく、その代わりに聞こえて来たのは感情のない女性のアナウンスだった。
耳から離して、再度履歴をタップする。またアナウンスが流れる。
ダメ押しにもう一回。私は履歴のボタンを押した。
★
「なあ、善逸。これって何なんだろうな?」
「うーん…お前の羽織柄って事だけはわかる」
善逸と合同任務の帰りの事だ。蝶屋敷に向かう森の中で俺はそれを拾った。
今、善逸が言ったように自分にとって身近な柄……緑の市松模様のそれは俺の手より少し短く、薄さは1センチにも満たない。表面は黒く、明るい所で覗き込むと姿見のように自分の姿を映す物だ。
側面には左に押せる物体が3つ。右には1つ。因みに市松模様は外側を覆っていて、何と表現すれば良いのだろうか。
蓋…?いや違うな。とは言うものの、それ以外に呼び名が浮かばないので、”蓋“とする事にしよう。
その市松模様の蓋は物体をひっくり返すと姿を表す。
左側上部に横楕円の穴が空いていて、左から黒い丸、銀色で針の糸よりやや大きい丸、そして1番右側には白い丸がある。
見た事も触った事もないのに、妙に手に馴染むこの感覚は何なのだろう。
何となく、あまり他人に公言しない方が良い気がする。
と言う事で、この物体の事は俺と善逸だけの秘密になった。どうせ秘密を共有するなら恋人としたいのが本音だけど仕方がない。
その俺の恋人である七瀬には話さない方が良い気がする。何故だかわからないが、脳がそう警告して来ている。