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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第39章 雪嵐は春の訪れと共に / 🔥


紗雪との勝負を終えた杏寿郎さんは、その後湯浴みの為浴室に向かい、その間に自分は着物に着替えて出かける支度をしていた。

すると湯浴みを済ませた彼が外出用の着物に着替えてやって来る。私の爪に紅を塗る為だ。


「よし、これで終いだ」
「ありがとうございます……」

杏寿郎さんが右手に持っていた小さなハケを爪紅が入っている容器に戻し、文机の上に置いた。

「んー…やっぱり塗るの上手ですよね。もう既に気分が上がっていますよ」
「そうか!」
「はい!」

私の目の前にあるのは自分の両の爪にのせられた茜色。液が乾くまで指先を伸ばしている所だ。


「想像は出来てましたけど、やっぱり大人の色だなあと言う印象です…」
液が乾いたので、一度掌を閉じる。そして改めて塗ってくれた彼の前に開いた両手を見せた。

「まだ私には早かったかなあとも思うんですけど……」

“どうですか?”

そう言葉を続ける前に、10個の茜色に杏寿郎さんからの口付けが数回落ちる。

「………」
「………」

心臓の鼓動がいきなり速くなる。
気持ちも顔の表面温度も急上昇した私が目の前の彼の双眸に映り込んでいた。


「塗っている間、ずっとこうしたいのを我慢していた」
「そう……ですか」

珍しく恋人の顔がほんのりと赤い。

「君の爪紅はどんな色も独占したいと以前伝えたが、この色は本当に俺の前でだけにしてほしい」
「はい……」

「では行こうか」
はい、と頷いた私の両手を持ったまま立ち上がらせてくれる。そしてくるっと前を向いて掌同士を絡めて玄関に向かう。

杏寿郎さんは耳もしばらく赤かったようだけど、この時の私に確認する余裕はなかった。







「よし!天童!その調子だ。姿勢が良くなったぞ」
「 はい、師範!ありがとうございます」


玄関から庭に回ると、紗雪が素振りしている様子を槇寿郎さんが満足そうに見ていた。
本当に基礎からみっちり鍛え直すらしい。


「槇寿郎さん、凄く楽しそうですね。千寿郎くんもいつもより張り切っているような気がします」

「確かにそうだな、天童少女も良い顔をしている」

私と杏寿郎さんは庭の様子をチラッと確認した後、互いに笑顔を交わし、町へと向かった。



こうして季節外れの雪嵐は収まり、煉獄家に本当の春の暖かさがやって来たのである——



end.




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