恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第33章 狐に嫁入り? ② / 🔥
「よ、嫁?私があなたの?」
「うむ!今日がその望月(もちづき)の夜!君を迎えにやってきたと言うわけだ」
今、私と話しているのは800年!生きていると言う九尾の狐。名前は杏寿郎と言うらしい。
さっき私の声が突然出なくなった…かと思えば、彼の妖術1つで声がまた出せるようになった事から察するに、どうやら真実のようだ。
10年前、両親と夏祭りに行った時に私がはぐれてしまい、たまたま立ち寄った神社で小狐の姿でいた彼に会ったのがきっかけだと言う。
迷った……?あの時そんな事があったっけ…。私はあの晩の事を思い出そうとするけれど、記憶にもやのようなものが被さってあまり辿れない。
『娘、すまない。今君の記憶を戻す』
「え……」 「父上!?」
頭の中に直接響く、杏寿郎さんとよく似た声が聞こえた瞬間。
私の記憶に濁流のように勢いよく、映像が入り込んで来た——。
『と言うわけで、七瀬さんの周辺に気になる事があった為、俺が君の記憶を封印した。すまなかった』
「い、いえ。大丈夫です。ご心配して下さり、ありがとうございます…」
この声の主は杏寿郎さんのお父さん。槇寿郎さんと言うらしい。
ご家族の事も少し教えてくれたのだけど、杏寿郎さんはお母さんの他に弟さんが1人いるそう。弟と言っても、300年生きているみたいなので、人間の私より大分先輩だ。