第71章 右手に陽光、左手に新月〜水柱ver.〜 / 🌊・🎴
「義勇さん、七瀬の手紙読みました! 優勝おめでとうございます! 俺は絶対義勇さんが勝つと信じていましたよ」
炭治郎は七瀬からの手紙を握りしめたまま、義勇との距離をググっと詰めて話をしている。
七瀬は炭治郎が帰宅すると素早く義勇から離れ、共に炭治郎を玄関で出迎えた。
鼻が効く彼だが、義勇の百人一首優勝に意識がいっている為、まだ二人の仲に進展があった事は気づいていない。
「炭治郎」
「はい! 鮭大根楽しみですね」
「(近い…どうしてこんなに距離を詰めて来るんだ)」
疑問に思う水柱だが、追いやる事はしない。それは炭治郎が曇りなきまなこで彼を見つめているからである。
「あれ? 義勇さんから甘いにおいがしますね。七瀬のにおいと似ているような…」
少しだけ義勇から離れた炭治郎は、自分の隣に座る七瀬に視線を移す。じわっと彼女の背中を冷たい汗が浮かぶ。
先程二人が話していたように、炭治郎に隠し事はやはり出来ないようだ。
「炭治郎、話がある」
「はい! 何でしょうか」
義勇は率直に七瀬との関係に変化があった事を炭治郎に伝えていく。水柱の告白を受け取った彼は、わかりましたと素直に返答した。
すんなり受け入れた炭治郎に対し、感心すると同時に疑問が湧いた義勇は念の為、もう一度七瀬と恋仲になった事を伝えていく。
「義勇さん、俺も実は七瀬が好きなんです」
「知ってる、やはりそうか」
「え、えええ?」
炭治郎の突然の告白に驚いたのはもちろん七瀬。彼女はようやく先程義勇が言った【牽制になる】と言う言葉の意味を理解した。