第71章 右手に陽光、左手に新月〜水柱ver.〜 / 🌊・🎴
「(炭治郎のヒノカミ神楽、凄い! 水柱と戦えてる。言ってた通り、やりやすいんだな)」
先程の自分と同じように防戦が多いが、きちんと義勇の剣さばきに対応している後輩隊士。
「(凄く楽しそう。水柱が師範って想像出来なかったけど…良いかも)」
先程までの義勇との打ち合い後、短く荒い呼吸をしていた七瀬は、ゆっくりと息をする。
—— もうひとがんばりだ。
カン、カン、カン、と炭治郎と義勇が持つ木刀が乾いた音を響かせる。
防戦一方の状況は変わらないが、炭治郎は兄弟子の動きをひたすらに見極めようと必死だ。
「(一人で二人を相手してるのに、義勇さんの太刀筋が乱れない。本当に凄いな! きっと七瀬がこの後連撃をしてくるはずだ。だったら俺はほんの少しでも良いから…)」
体力を削る事ができれば。
ゴウ、と炭治郎の口元から炎に似た息が姿を現す。
「(来る!)」
「ヒノカミ神楽・飛輪陽炎」
義勇に向かって振り下ろされた木刀の先端がスッと伸びたかのような一撃へと変化し、彼の左腕をわずかにかする。
「(やった!一撃入れた!)」
「…ここまでだ」
ふうと短い息をついた義勇が、表情を少しだけ柔らかな物に変えた。