第4章 初めてのキスはレモン味 伊黒小芭内
その時、月城のスマホに何か連絡が入ったのか、慌ててスマホを確認するも、また直ぐに鞄に仕舞い込む。
その表情は浮かない顔をしていた。
「どうした?」
「え?あ、彼氏からメールで…」
すっかり忘れていた。
そうだ、そういえば月城は彼氏持ちだった。
その事を思い出し、少し残念に思った。
そこで俺は気付いてしまった。自分の気持ちに。
昼間からずっと感じていた妙な胸のざわつきは、月城に恋し始めていたからなのだと。
この甘酸っぱい青春のような気持ちは、もう伝える事は叶わないだろう。
それが少しばかり切なかった。
「今日出張なんだけど、来週も出張なんだって」
「そうなのか。お前の彼氏は、確か営業部の瀬田だったな。営業部はそんなに毎週出張があるのか?」
「うーん、営業部の事はよく分からないけど…そうみたい」
本当に出張か?と少し疑問に思うも、俺自身も他部署の事はよく分からない。
これ以上の詮索はやめておこうと思った。