第3章 君の笑顔が好きだから 煉獄杏寿郎
隣に座った紗夜から香る石鹸の匂いに、どういうわけかドキドキしてしまう。
俺も同じものを使っているのだから同じ匂いのはずなのに…何故なのだろう。
「それで、聞きたい事とは?」
「……昼間の事なんですけど…」
「それは、昼間俺が君に聞いた事についてか?」
「そうです。……どうしてあんな事…」
「それは…忘れてくれと伝えたはずだ」
「無理です!」
「何故だ!」
「だって…期待しちゃうんです!」
どう言う事だ。
君に好きな男がいるかどうか聞いただけなのに、何を期待すると言うんだ?
「そう言う事を聞くって事は、私に興味があるって事ですよね?…と言う事は、もしかして杏寿郎さんは、…私と、同じ気持ちなのかなって…」
同じ気持ち?
と言う事は、紗夜は俺の事を思ってくれているということなのか?
それが本当なら、俺も…期待してしまう…
もしかしたら俺達は…という思いが俺の鼓動を速くしていく。
はやる気持ちを抑え、頭の中で冷静になれと唱えながら、俺は紗夜に問いかけた。
「もし、俺が君に思っている事を包み隠さず伝えたら、君も俺に…教えてくれるだろうか?」
俺の問いに、紗夜は微笑み頷いた。
「はい、私もあなたに伝えたい事があります」
「うむ、では俺から行かせていただく」
今から一番伝えたかった大事な事を伝える。
俺はゆっくりと深呼吸した。