第9章 あなたの愛に包まれて*後編 上* 宇髄天元
手を引かれ、着いたところはお洒落な服屋さん。
アンティーク調のお洒落な家具や、所々に飾られた小さな森の動物たちに、乙女心がくすぐられる。
棚に並ぶ洋服は、可愛過ぎず地味過ぎず、洗練されたお洒落なデザインが、私の好みドンピシャなのだ。
そしてここを、私はよく知っている。
「宇髄さん」
「んー?」
「なんでここ入ったんですか?」
「あぁ、紗夜が好きそうだなーって」
私の好み、分かってくれたのかな。
なんか嬉しい。
「はい、好きです」
「だろ?」
私の返事に気を良くした宇髄さんはにこっと笑い、そのまま私の手を引いて店内を歩き始める。
離す気は、無いみたい。
手を繋いだままなんて、ちょっと照れてしまうな。
でも私も離して欲しくはないから、もうこのままにしてしまおう。
手を引かれ、ちょっとこそばゆい気持ちになりながら、私も宇髄さんと一緒に店内を見て回った。
秋色のカーディガンにふわふわのセーター、コーデュロイのスカートや暖かそうなコート、可愛い冬の装いが飾られた店内に、見ているだけでワクワクする。
「楽しそうだな」
「え?」
「目ぇキラキラしてる」
ぇえ!恥ずかしぃー…
照れてしまってプイッとそっぽを向いた私を、可笑しそうに笑いながらよしよしと頭を撫でる宇髄さん。
子供っぽかったかなと思ったけれど、宇髄さんが笑ってくれるなら、なんでもいいや。
「ここの服が好きで、大学生の頃よく来てたんです」
「おぉ、マジ?」
「はい。だから宇髄さん、よく私の行きつけの店分かったなぁーって」
「見てたからなぁ、俺」
「…ぇえ?!」
「ははっ、嘘。自然と紗夜の好みを察知した俺凄くね?」
「はい、凄いです!」
「んじゃ、行くぞ」
「え?」
会話をしながらも宇髄さんはしっかりと服を選んでいたようで。
しかも数着。
試着室の前まで手を引かれ、ニッコニコで服達を手渡されると、「行ってこい」と手渡された服達と一緒に試着室の中に押し込まれた。
コレ全部着てみろってことかしら?