第9章 あなたの愛に包まれて*後編 上* 宇髄天元
言い争っていた二人も、奏真の一言にピタリと静かになった。
「ふふ、そうよ。赤ちゃんは見たことある?」
「うん、ほいくえんでみたよー。おなまえはー?」
「爽弥(そうや)って言うの。仲良くしてくれるかな?」
「うん!」
宇髄さんから下ろしてもらい、「一緒においで」と葉月さんに誘われた奏真は、素直にその後をトテトテとついて行く。
葉月さんが、リビングの隅に設けられたパズルマットの敷かれたキッズスペースに爽弥くんを仰向けに寝かせると、爽弥くんはころんと上手に寝返りを打ち、どこかに向かってずり這いを始めた。
保育園で見たことはある、と言ってもきっと、お部屋の外から覗いてみるくらいだろう。
初めて間近で見る赤ちゃんの動き一つ一つを、奏真はワクワクした目で見つめていた。
これから家族になる私たち
そこへいつの日かもう一人…
そんな日が訪れたらいいな
ぽかぽかとあったかい気持ちで二人を眺めた。
不意に、寄せられていた肩を更に抱き寄せられる。
見上げてみれば、優しい眼差しで二人を見つめる宇髄さん。
同じこと、思ってくれているといいな
そんな風に思っていると、ふと私の視線に気付いたようで、目の前の二人からこちらへと視線を移す。
「ん?どした?」
「ううん、なんでもない」
言うつもりのない私は、視線を爽弥くんと奏真に戻した。
それが気に入らなかったのか、宇髄さんは私の頬を片手できゅっと挟み込む。
「にゃにしゅるんれふか!」
「なんでもねぇようには見えなかったけど?はぐらかすなよ」
「むー、…ひょうひゃにゃふへもいいはにゃっへ」
「今日じゃなくてもいいって?んじゃいつ教えてくれんの?」
言うまでやめてやんねーと宇髄さんは、ふにふにと私の頬っぺたで遊び始める。
なんだか面白がっているような
だって宇髄さん、笑ってるもの…