第9章 あなたの愛に包まれて*後編 上* 宇髄天元
この輪の中に、どう入っていこう?
奥様に、挨拶もまだなのに。
ポツンと取り残されどうしたものかとオロオロしていたら、
「奏真、こっち来い。紗夜もほら」
「わっ…」
宇髄さんは奏真を抱き上げ、私の肩を抱き寄せた。
こんな人前で何をするのかと思いきや、
「こっちが紗夜。こっちが奏真。二人とも、俺の宝物だ」
自信満々で私たちを紹介してくれる。
なんだこれ、恥ずかしいぞ?
でも宝物とか…ちょっと嬉しい。
こそばゆさを感じながら目の前の二人の様子を窺うと、
「どんな紹介の仕方だァ…」
と、不死川さんは顔を引き攣らせ、
「素敵じゃない。これでこそ宇髄くんよ」
と、奥様はにこにこと笑っていた。
「葉月です。よろしくね」
「月城紗夜です。こちらこそよろしくお願いします」
「思ってた通り可愛いわぁ。もー宇髄くんてばなんでもっと早く連れてきてくれなかったの?」
「いつ連れて来ようが俺の勝手だろ」
「こっちが奏真くんね。奏真くんはいくつかな?」
「5さい!」
奏真は手をパーにして答えた。
「可愛い〜!親子揃ってなんて可愛さなの!」
「葉月チャン?二人とも俺のだから、そこんとこヨロシク。あんまジロジロ見んなよ?」
「えーいいじゃない。減るもんじゃないし」
「いや、減る」
「なんでよ!」
二人してなんだかよく分からないことで揉め始める。
不死川さんは「オイオイまたかよォ」と言いながらキッチンの方へ向かった。
それにしても、奏真は分かるけど私まで、可愛いなんて…
一体どこをどう見たらそうなるのか。
宇髄さんにもう何度も言われ続けてはいるけれど、こればっかりはどうも慣れないな…。
しかしいつ終わるのかこの二人。
不死川さんは呆れながらもテキパキとお茶の用意をし始める。
さすができた旦那様。
そういえば、さっきからずっと抱っこされたまま大人しくお利口さんの奏真。
そろそろ下ろしてあげた方がいいかなと宇髄さんに言おうとしたその時、
「あかちゃん…」
奏真が一言ぽつりと呟いた。
奏真の二つのお目々は、葉月さんに抱っこされた可愛い赤ちゃんに釘付けになっていた。