第9章 あなたの愛に包まれて*後編 上* 宇髄天元
急遽約束をした日曜日当日。
宣言通り10時に迎えに来た宇髄さん。
「よし、行くぞー」
「はーい!」
奏真の元気いっぱいの返事を合図に、私たちはアパートを出発した。
奏真を真ん中にして、3人で手を繋いで歩いていく。
行き先はまだ告げられていない。
一体どこへ向かっているのだろう…
「こーやってやりたい!ぴょんて!」
そう言うと、奏真はその場で一生懸命ジャンプした。
「いいぜ、手ぇ離すなよ?せーのっ!」
宇髄さんに合わせて私も一緒にひょいっと奏真の手を上へと持ち上げると、奏真は勢い良くポーンと跳ね上がった。
「きゃっはー!たかーい!」
宙ぶらりんが楽しいのかケラケラと笑う奏真。
行き先は分からず仕舞いだけれど、これだけでも充分楽しいな。
それにしても、これは…
跳ねてるだけで、ほとんど前に進めない。
それでももっともっととせがむので、しばらくの間私たちはちっとも前に進まない散歩(?)を楽しんだ。
普通に歩けばきっと10分。
遊びながら来たので20分かかって、ようやく目的地に到着。
2階建てのオシャレな一軒家。
表札には“不死川“と書かれていた。
「あ、同僚さんのお家ですか?」
「そ、不死川ん家」
そう言うと、宇髄さんはインターホンを鳴らす。
今日はここにお邪魔するのかな?と考えながら、家主さまが出てくるのを待った。
ふとお庭を見ると、ウッドデッキに綺麗に手入れされた芝生。
いいなぁ、いつかこういうお家に住みたいな。
密かな夢を胸に抱く。
しばらくすると、ガチャッと音を立て、玄関から不死川さんがお出迎えしてくれた。
「よォ、遅かったじゃねェか」
「そぉ?ま、いいじゃん?それより早く上がらせろよ」
「図々しいなァいつもテメェはよォ!」
いいんですか宇髄さん⁈
なんか不死川さんめっちゃキレてますよ⁈
内心ハラハラしながら2人を見ていた私だけども、よく見ると不死川さんは口調の割に青筋は立ててなくて、きっとこれがいつもの2人のやり取りなんだなぁと納得した。