第8章 あなたの愛に包まれて*中編 下* 宇髄天元
奏真に促されるまま紗夜の肩に触れるが、ビクッと肩をすくませ怯えたように俺を見上げる。
極め付けは…
「ごめんなさいぃ…」
大粒の涙を流しながらの謝罪。
何度謝らせてんだ俺は…。
そんな事させたいんじゃねぇ。
そんな顔させたかったんじゃねぇ。
俺はただ、自分だけ蚊帳の外みたいにされたことが悔しかったんだ。
そんな俺のわがままみたいな感情で紗夜に当たっちまって…
泣かせて…
只々胸が苦しい…
「紗夜…」
名前を呼び、もう一度触れてみる。
やはり身体をすくませるが、逃げることはしない紗夜。
「紗夜、ごめん…」
そのままそっと背中に手をまわし、
許してくれ…と、縋るような想いで抱きしめた。
「っ……」
「ごめんな…」
身体に力が入り身を固くする紗夜をほぐすように、抱きしめながら背中をゆっくりさする。
暫くそうしていると、身体の力が抜けてきたのか、ほぅ…っと息を吐き俺に身を委ねてきた。
しゃくり上げていたのも治まってきたようだ。
俺はぎゅっと紗夜を抱きしめ直す。
「許してくれるか?」
「…宇髄さんは、悪くないですよ?」
「怒鳴っちまっただろ」
「あれは、私が黙ってたから…悪いのは私です」
「お前は悪くないだろ?俺が悪ぃんだって」
「悪くないです」
「悪ぃの!」
「悪くない!」
「わりっ……なぁ、もうやめねぇ?」
「……そうですね……ふふっ」
何を言ってんだか分からなくなってきて、可笑しくなって二人で吹き出した。
やっと見れた紗夜の笑った顔にほっとする。
紗夜の涙の跡を指で拭ってやってから、もう一度ぎゅうっと抱きしめた。