第8章 あなたの愛に包まれて*中編 下* 宇髄天元
寝てるかもしれないからと、紗夜が子ども部屋のドアをそっと開けてみると…
…ん?
「ガッツリ起きてんな」
「ガッツリ起きてますね」
こちらを見つめるくりっとした大きな瞳とぱちっと目が合った。
「あー、てんげんおにぃちゃんだー」
お、意外と元気?
と思ったが、やっぱり顔は少し赤い。
まだ熱はあるみてぇだな。
ベッドに横になっている奏真のそばに寄り、話しやすいようにそこに二人で座る。
「奏真ー、大丈夫か?」
「うん、もうおきれるー。もういくー」
「行くって…どこ行く?」
「きょうりゅうみにいくー」
「あぁ…」
行きたかったよなぁ。
ムクリと起き、今にもベッドから飛び出していきそうな奏真。
もうちょい寝てろよ?と奏真を再びベッドに寝かせ、よしよしと頭を撫でてやる。
「元気になったら連れてってやるからな」
「ぼくもうげんきになった」
「でもまだあっちぃだろ?」
「うん、あっちぃ…」
「そのまま動いたらもっと熱上がっちまうぞ?あっちぃの無くなったら行こうな」
「んー、わかった!」
「よし、いい子だ」
おでこに手を当ててみると、思ったより熱くはない。
元気もあるし、ちゃんと寝てりゃぁじき良くなるんじゃねぇかと思った。
さて、問題はこっちだ。
俺の隣にちょこんと大人しく座っているこいつに俺は物申したいことがある。
「おい紗夜」
「…はい」
「なんで黙ってたんだよ」
「っ…」
隠されてた事への腹立たしさを抑えようとするといつもより声が低くなっちまう。
俺のこのただならぬ雰囲気に紗夜は息を呑んだ。
「…ごめん、なさい…」
「何がごめんだ。理由はなんだ」
「あ、の…うつしちゃいけないと思って…。迷惑かけちゃいけないって…」
俺の中で、何かがプチッと切れた気がした。
「あのなぁ!」
声を荒げた俺に紗夜はビクッと身体をすくませる。
怖がらせたか…。
それでも俺は、どうしても黙っていられなかった。
なんで頼ってくれない?
一人じゃねぇ、俺がいるって言っただろ?
俺だってお前の力になりてぇのに、なんでだよ。
伝わってくれよ、俺の気持ち…
なんで分かってくれないんだと、まるで駄々をこねる子どものように俺はつい怒鳴ってしまった。
怯えているかもしれない紗夜にお構いなしで…