第2章 幸せのカタチ 不死川実弥
月城は「少々お待ち下さいね」とにっこり微笑むと、店の奥の方へ引っ込んで行った。
別に月城が悪いわけじゃない。
混んでる時に来てしまった俺が悪いだけだ。
だがなァ、どうしても言いてェ事がある。
「何でこうなっちまうかねェ」
「それはこっちのセリフだ。まぁ冨岡じゃなかっただけマシだと思うが」
「それもそうだなァ」
「えぇえっ!…あのぉ、不死川さんはあの女の子とお知り合いなの?」
「いや、知り合いっつーかなァ……」
軽く説明してやるかと思ったその時、
「お話中失礼致します。不死川様でいらっしゃいますか?」
「あ、はい。俺が不死川ですが…」
ここの女将の妙と名乗る女性がやってきた。
なんでまたそんな偉い人が俺んとこに来るんだァ?
そう思い首を傾げると、
「先日は、うちの紗夜が大変お世話になりました。命を救って頂いたと。有難うございます」
俺に向かって女将さんは頭を深々と下げた。
「女将さん頭上げて下さいっ…」
俺がアタフタする横で、初めはキョトンとしていた伊黒と甘露寺だが、女将さんの話を聞いて「あ〜なるほどね〜」みたいな顔をしてこっちを見ていた。
ア“ークソ!女将さんには申し訳ねェが、俺はこういうの苦手だ!
オイ、見てねェでどうにかしてくれ!
すると、店の奥からおはぎを持った救世主が現れた。
「ああっ!妙さん、不死川さんが困っちゃってます!」
「そうね、ごめんなさいね。でもどうしても伝えたかったのよ。だって、紗夜は私と主人の娘みたいなものだもの。失わずに済んで良かった。感謝してもし切れないわ」
「妙さん…」
気持ちは分からないでもない。
怖がらせちまうと思って言わなかったが、実はあの時かなりヤバかった。
俺が見た時にはもう既に鬼に腕を掴まれていて、あと1秒でも到着が遅れていたら、月城はここにはいなかったかもしれない。
間一髪だった。
実際、俺ら鬼殺隊が間に合わずに命を落とす一般人も多いだろう。
月城の運の強さもあるが、本当にあの時、間に合って良かったと思う。