第7章 あなたの愛に包まれて*中編 上* 宇髄天元
「宇髄さん、あの…」
紗夜がおもむろに口を開く。
「ん、何?」
「さっきは、すいませんでした。なんか、巻き込むみたいになっちゃって」
「あぁ…いや、俺は別に構わねぇけどよ。アイツとはよく会うのか?」
「うーん、そうですね。ここに来ると割と良く顔を合わせる人で。実は…会う度にうちの洗濯物を畳もうとしてくるので、ちょっとしつこいなって思ってたところだったんです。今日は宇髄さんがいてくださって助かりました。ありがとうございます」
そう言うと紗夜はにこっと笑った。
お役に立てて何より。
それにしても、聞いてるだけだとまるで変態だなぁアイツ。
ヤバイ奴だろ普通に。
「なぁ、お前さ。今日電話で『変な奴には会った事無い』って言ってたけどな、ああ言うのを『変な奴』って言うのよ」
「!…そうなんですか。しつこくて嫌だったんですけど、親切心から言ってるのかなって。そう思ったら、悪い人ではないのかなぁなんて思ってました」
いやいや、アイツは完全なる変態だ。
紗夜狙いで『手伝おうか?』とかなんとか言って仲良くなろうとか思ってたんだろ。
だから言ったじゃねぇか、子連れだって声掛けてくる輩だっているって。
…いや言ってねぇか、俺が思っただけだわ。
しっかしこんな調子じゃもしかして他にもいるんじゃねぇか?
あ“ー、心配!
「一応聞いとくが…、他にもいたりする?ああいうヤツ」
「いえいえ、まさか!何回か顔合わせたりする人もいますけどちょっと会釈するくらいですよ」
「そんならいい」
それって男か?とは聞かなかった。
この時間なら大体独り暮らしの男だろう。
仕事から帰って飯食ってそれから来たりすんだろ?
と俺は勝手に思っている。
会釈ねぇ…
それが慣れて来た頃に今度は話しかけてきたりな。
……いやダメだろ。
想像しただけでムカムカしてくるわ。
さっき『ここに来る時は俺と一緒』の約束をしておいて本当に良かったと、心からそう思った。
もしまた変なヤツが来たら、俺がちゃんと守ってやっからな。