第6章 あなたの愛に包まれて*前編* 宇髄天元
ーガチャ…
「ママのどかわいたぁ…」
「「?!」」
お昼寝から起き出してきた奏真が、目を擦りながらリビングへとやってきた。
2人揃って近付き過ぎていた身体を慌ててパッと離す。
「そそそっ、奏真!起きたんだね!い…、いっぱい寝れたかな⁈」
び…びっくりしたぁ……
びっくりし過ぎて思いっきり吃ってしまった。
目の前の宇髄さんも、我に返ったのか口元を手で覆い、ふぃっと顔をそらしている。
その宇髄さんの頬が、薄らと染まっているように見えて…
今日一日ずっと余裕な宇髄さんしか見てこなかったから、そんな宇髄さんをちょっと可愛いと思ってしまった。
「麦茶持ってくるから待っててね」
「うん!あっ、てんげんおにいちゃん!」
宇髄さんを見つけた奏真は、嬉しそうにぽんと飛びついた。
「どうしたのー?きょうおとまりするのー?」
「いや、もう少ししたら帰るぞ。いっぱい寝たか?」
「ねたー!なにのんでるの?」
「これか?コーヒーだ。飲んでみるか?」
宇髄さんが飲んでたのはブラックコーヒー。
勿論奏真は飲んだことがない。
奏真はくんくんと匂いをかぐと、お気に召さなかったようで顔を顰めた。
「っはは、お子ちゃまにはまだ早ぇな」
そう言いながら宇髄さんは奏真を膝の上に乗せた。
「はい、麦茶だよー」
「ママありがとー」
奏真は麦茶を美味しそうにゴクゴクと飲んだ。
さっきまでの甘い空気は何処へやら。
とても穏やかな時間が流れている。
何事もなかったかのような雰囲気を出しているけれど、さっきまですごい事をしていたよね?私達。
あのまま奏真が来なかったら、してたのかな…
さっきのを思い出してしまって、顔に熱が集まってくる。
チラッと宇髄さんを見たら、「どうした?」なんて爽やかな笑顔で返されて…
気にしてるの、私だけ?
どうしてあんな事、したのかな。
でも、なんとも思ってない子には…しないよね?
何にも言われてないし、聞く勇気もないけど
…気がある、くらいには思っててもいいのかな…
「ほいくえんでねー、かんぽっくりできるようになったよー」
「お、すげぇじゃん!今度見せてくれな!」
奏真と宇髄さんのお喋りに和みつつ、
そんな、淡い期待を抱いてしまうのだった。
⭐︎中編上へ続く⭐︎