第1章 ほんとの気持ち 冨岡義勇
そんな不死川の想いを俺が知る由もなく…
「忘れるところだった」
「何ですか?」
「胡蝶から預かってきた」
女子が好きそうな、綺麗な小さな硝子の小瓶。
それを紗夜に渡すと嬉しそうに目をキラキラさせた。
「これ香水なんです」
「好きなのか?」
「好きというか…義勇さんと会う時いつも稽古ばっかりだから、もう少し女の子らしくしたいなと…しのぶさんに相談したら使ってない香水があるからくれると言うので、頂いちゃいました」
香水なんか使わなくても充分可愛いと思うのだが、女心は複雑の様だ。
しかし、使ってはいない様だが胡蝶のお下がりか…
自分で選んでない香りをつけるのは、本人的にはどうなのだろうか。
いっそのこと……
「それは胡蝶に絶対使えと言われたのか?」
「そんな事はないですよ?」
「ならば、今度一緒に選びに行こう」
「それって…」
「初めての逢瀬だな」
そう言うと、紗夜は眩しい程の笑顔を俺に向けてくれた。
「楽しみです!」
fin