第3章 魔法使いの肖像画家
「知りませんでした」
私は手を組んで祈りを捧げた。犠牲になった肖像画家は、同業者組合の規範を守り抜いたのだ。
収監中の人物や、指名手配中の人物は、決して描いてはいけないのだ。
「やはり、私は戦うと思います。どうしても選ばなくてはならない状況になれば。私は規範を守ります。逃げるための戦いかもしれませんが。⋯⋯私は姉の様に勇敢ではありませんので」
「それで良いわ。言ったでしょう? もう、子供を死なせたくないって。ですが、貴女が教師でいる時間は、生徒を守る義務が発生します。貴女なら、逃げるための時間は稼げると信じていますが、嫌でなければ、パトリックの授業を受けなさい」
「クレイン師では駄目ですか? その方が本気になれると思うんですが」
正直な気持ちを伝えると、ラークはクスクス笑った。
「駄目よ。貴女を正規の教師として迎える羽目になるから。⋯⋯これを渡しておくわね」
ラークは、移動先が登録されたアメジストを置いた。
「汽車も箒も嫌でしょう? これを使えば、この館の中から直接移動出来るから、出入りの為に、強力な目眩しを使って消耗する必要も無いわ」