第6章 Escapadeー突飛な行動ー
「お前家に着いたら連絡よこせって言っただろーがっ!」
スピーカーにしているわけではないのに、電話機からキーンと威勢のいい怒鳴り声が響いた。
「悟…、開口一番に怒鳴るんじゃありません。鼓膜が破れるかと思ったじゃないの」
「へ……?あれ?俺間違えてかけた?」
「間違えてないわよ。これは唯の電話です。ちゃんと無事に帰ってきて今はもう寝てしまったわよ」
「そっか…連絡しろって言ってたんだけどこねーからさ。明日にでもまた本人に話すわ」
「悟、唯ももう子供じゃないんだから少しは過保護を卒業したら?唯に彼氏でも出来たらどうするの?」
「は?彼氏?いやいやないっしょ!唯だよ?…仮にもし彼氏なんて作ってきたら俺が見定めしてポイだろ」
「本当に自己中心的なんだから…足元すくわれないようにね」
呆れて伝えれば“はいはい”と面倒くさげな返事が聞こえ通話は終了した。
「はぁ…育て方を間違ったかしら…。とりあえず悟には何も言わないでおくわ。それとお父様にもね」
お父様もお兄ちゃんほどではないけれど過保護である…
男の人と手を繋いで遅くに帰ってきたなんてバレたら…
想像しただけで寒気がした。
「ちゃんとお付き合いする事になったら…頑張ってお兄ちゃんにもお父様にも話そうと思うの…。だからそれまではよろしくお願いします…」
「どちらも過保護だから仕方ないわ。唯が間違った事をするとは思っていないから大丈夫よ。遅いからそろそろ休みなさいな」
母の言葉に安堵し“おやすみなさい”と告げて自室へ戻った。