第6章 Escapadeー突飛な行動ー
唇が離れ、ゆっくり目を開ければ艶っぽい顔をした夏油の顔があって視線がぶつかった。
「ふっ…唯の唇は柔らかいね」
「…へ?ふぇっ!?そ…そうですか!?」
キスの余韻でお花畑に行っていた頭が夏油の声で急に現実に戻された。
「唯…いきなりキスしてしまってすまない。順番が違うが同じ気持ちだと分かって止まれなくなってしまった」
「そんな…謝らないでください!私も初めてのキスが傑先輩で…嬉しかったです…」
恥ずかしさからだんだん声が小さくなっていきモゴモゴと伝えると夏油は笑ってまたギュッと抱き締めた。
「唯、先にキスをしてしまってから言うのもおかしいんだが…良かったら私と付き合って欲しい…と伝えるのはいきなりすぎると思うし、良かったら“お試し”みたいな感じではどうかな?」
「“お試し”ですか??でも私は本当に傑先輩を想っていたので、そんなの必要ないと思うんですけど…?」
「そう言ってもらえるのは嬉しいよ。でもまだ出会ってからそんなに過ごしたことも無いし、もしかしたら唯の好きは呪術師への憧れみたいなものもあるかもしれない。だから何回かお試しでデートをしてみて、それでも唯が私で大丈夫だというなら付き合ってもらえないかな?」
「確かに傑先輩と会ったことは数回しかないです…でもっ!憧れもありますけど…きっとこの気持ちはそういうのとは違います…」
「唯の気持ちはちゃんと伝わっているよ。だけど私がちゃんと大事にしたいんだ。それとも私とのデートは嫌かい?」
そう言って覗き込む色気ムンムンの顔を見てゆでダコみたいに真っ赤になりながら首を横に振った。
「なら良かった…ってお試しの間キスはしてもいいのかな?出来ればもう一度したかったんだが…」
そう言いながら夏油の顔が近付き受け入れるように目を瞑った…
その瞬間ー…
♬~♪~
唯の携帯が鳴り響いた。