第1章 Story -出会い-
いつも俺には誰も何も言わなかった。
いや、言えなかった。
力があるものが偉かったからだろうな。
だからなのか常に虚無感があった。
何をしても満たされることのない心。
柄にもないけど俺を変えてくれる何かが欲しかったんだ。
常に何かを求めていたのかもしれない。
ある日また俺は隠れて脱走した。
こうでもしないと外には中々出られない。
家の中は窮屈だ。
やる事覚える事が缶詰状態だ。
俺は自由でいたいんだよ。
でも自由に出歩けば外の世界では命を狙われる。
落ち着く場所なんて何処にもないことくらい理解してた。
だから脱走するのはほんの少しの気晴らし。
それもいつもの事だった。
しばらくブラブラしていたら何かの気配?がして立ち止まった。
そこにはベビーカーを押す女性がいた。
そのベビーカーに低級呪霊が近づくと、さらさらと何かに変化したように空へ消えていった。
「なんだあれ…?」
呪霊なんて見飽きてるし興味もないけどその現象が気になった。
そっとそのベビーカーに近づき中を覗くとクリクリとした瞳の赤ん坊がきょとんとしている。
「こんな赤ん坊が祓った…のか?一体どうやったんだ…?」
ぶつぶつ言いながらガン見していると横から感じる視線。
「こんにちは。何か御用かな?」
優しい笑顔で俺に話しかけてくるこの子の母親らしい人物。
「あ…いや…。この子が何かちょっと気になっただけ…」
うまく伝えられなくて俺はぶっきらぼうに答えた。
見えたものを伝えても多分この人は見えない側だ。
もし見えていれば呪霊が子供に近づいた時に何かアクションするだろーし。
そんなことを思いながら視線を下へ向けていたら軽やかに笑う声が聞こえて上を見た。