【鬼滅の刃】after story【闇を照らして】
第2章 闇を照らして 初夜*
「...我慢しないで。私に分けてください」
欲深い、そう言えるような思考が表情に出ていたのだろうか。受取る覚悟は出来ている、そう言うように月奈は杏寿郎の頬を撫で唇を触れ合わせた。
「煽るのが上手いな。俺の欲は深いぞ」
抑えた声音に滲む情欲の濃さに月奈は少しの後悔を感じたが、重ねる唇は思いの外優しい。角度を変えて何度も唇を合わせると、次第に月奈の目は潤み始め落ち着き始めていた呼吸も再び浅くなっていく。ちゅっと音を立てて唇を離せば、そこにはぼぅっと熱に浮かされたような表情の月奈。
満足気に微笑んだ杏寿郎は、濡れた唇をペロリと舐めた。仰向けに組み敷かれた月奈は、杏寿郎のその姿にゾクリと背を震わす。
まるで獲物を捕らえる獣のような瞳。その瞳は爛々と光り月奈の視線を逃すまいと見つめる。
(あぁ、本当に獅子のよう...)
燃えるような瞳に金色の髪、寝間着から除く鍛え上げられた体躯。剣技の才にも恵まれ、まさに神に愛された人間なのだろう。
月奈が手を伸ばすと、いつもならば眼帯で隠された左眼に触れる。神に愛された代償なのだろうか、過去の無限列車での任務の際に鬼に潰され光を失った左眼、この瞼を開くことは二度とない。
人を守った証、乗客全員の生命と引き換えに奪われたもの。鬼殺隊であれば手足を奪われることも珍しくは無い、生命さえも...
「どうした?傷はもう痛くないぞ。見たくないならば眼帯を...」
枕元に置いた眼帯を取ろうと顔を上げた杏寿郎の首に腕を回し抱きついた月奈は左眼に唇を寄せた。
「いえ、このままで大丈夫です...人を守った証を見たくないなんて思いません。傷が痛まないのならば良かったです」
杏寿郎は驚いたものの、月奈の背に手を回し少し困ったように微笑んだ。
「君の肩や背、胸の傷だって俺は同じように思っているぞ」
静かに優しく杏寿郎の声が響いた後シュルリと衣擦れの音がした。ひやりとした空気を自身の肌で感じ、浴衣を留めていた帯が解かれたことに気付き月奈の身体が強ばる。
「...怖いか?」
首に回る腕の強ばりを感じ杏寿郎は月奈の背を優しく撫でてやる。布団に背を下ろしてやると不安気な月奈の表情が現れた。