第2章 黒に落ちる/小さくなった理由
手も、足も、動かせない
もしかして、拘束されてる…?
…あぁ、そうだ
組織の情報探ってたのがバレて、ジンに捕まったんだっけ…
オレはまだ生きてるのか?それとも殺された?
ここは…現実世界なのだろうか…
バーボン……零は?
オレのせいで疑われてないかな…
零、一人にしないって約束、守れそうにない…
零にばっかり辛い思いさせて、ホントごめん…
「いつまでボーっとしてやがる」
「っ‥!?‥ジン…っ!」
腹への衝撃でぼんやりとしていた世界から戻される
声の降って来る方を見上げると、そこには殺気駄々洩れの全身黒い衣装に身を包まれた男、公安が追っている組織の中で非情極まりない幹部の一人、ジンが睨みを利かせていた
腹の衝撃は、この男の蹴りが入ったというところだろう
「あまり虐めないでくださいよ。一応僕たちの情報源なので」
隣で腕を組んで壁に寄り掛かりながらそう言ったのは、バーボン
反対側でライフルを肩に煙草を吸っているのは、ライ
オレは組織の中でコードネームは持っていないが、この二人の情報収集役で雇われていた
そう、公安からの潜入捜査官として
同じくバーボンも公安から潜入しているオレの上司で同期の降谷零
たぶん、今、一番心穏やかではなく、オレを逃がすために策を練っているに違いない
そしてライはFBIから…ということは、情報屋のオレしか知らないこと…
「その優秀な情報源とやらが最近俺たちの周りをコソコソ嗅ぎまわってるとあの方から連絡が入った。一体どういうことか…返事次第では頭に穴が開くと思え」
「別に、ただの好奇心だよ。相手の情報を得るには、こっちの情報もある程度は必要なんでね」
「ほぉ…」
カチャっとジンの銃口がオレに向く
いつ撃たれてもおかしくない状況に、身体が強張った
「待ってくださいジン。彼を雇っているのは僕たちです。なんの事情も知らされずに殺されては困る」
「その通りだ。それにこいつの情報収集のお陰で成功した取引の方が多いだろ」
バーボンとライが説得を試みようとしているが、おそらくオレはここまでだ
殺気を隠しきれていないジンの冷たい目...
この状況を楽しむような口元...
こういうのを絶体絶命って言うんだろうな…なんて思っていると、もう一人の黒ずくめの男が止めに入る
「兄貴、撃ったらあの方の命令に背くことになりますぜ」