第13章 ハロウィンの花嫁
そして現場であろう6階に続く階段を、零・松田・オレの順に上って行く
誰かが暴れているという通報だったのに特に物音はなくて、ゴォォという空調の様な音が徐々に大きく聞こえてきた
最後の1段を上がる前に零が6階フロアを覗き込むと、6階のドアは中途半端に開けられていて人が倒れているという
入るべきだと判断した零の後ろに続いて足を進めると、部屋の端にあるパイプに外国人の男がロープで繋がれていた
意識を失い座り込んでいる様子に零と松田が急いで駆け寄ったが、オレはまだ周りを警戒すべきと判断し部屋の中を見渡した
男はオレ達に気付き目を覚ますと、慌てた様子で外国語を話し始めた
聞いた限りではロシア語だろう…
なんとなくのニュアンスはわかるが、オレには完璧に和訳できなかった
松田もロシア語はさっぱりの様で、男を安心させる為にオレたちが刑事だということを伝えようと日本語をゴリ押していたが、案の定男に通じることはない
最終的に零がロシア語でオレ達のことを話してくれて、やっぱりさすが零だなって思った
その様子を横に、オレは部屋の奥にあった扉にそっと近付いて扉の向こうに耳を澄ませた
通報の情報と、男がパイプに繋がれていたという様子からすると、他にも誰かいるに違いない…
ガコッ━━
ほら、予想通りだ
ドアの向こう側から物音がして2人に「向こうに誰かいる」と視線だけで合図をした
オレ達のやり取りに気付いた男は表情が一変し、慌てた顔で何か言い始めている
「逃げろ、だそうだ」
零が男のロープを切りながら和訳すると、松田は自分の名刺取り出し、先に下りて下の警察官に名刺を見せろと男に渡した
下に降りても言葉が通じなければお互い困ってしまうだろう
でも、男が刑事の名刺を持っていれば、待機してる警察官にこの男は被害者で保護しなければならない、ということの意味は伝わるはずだ
零を介して説明を聞いた男は自由になった身体でこの部屋を出て行った
「あの様子からすると、奥にいる奴にやられたんだろうな」
「あぁ…」
扉を見ながら言った松田に、零は拳銃を取り出しながら返事をした