第12章 米花商店街の魔女
第12章 米花商店街の魔女
「いいですよリュウさん!上手です!」
「風見っ、待って、怖い…っ」
「大丈夫です、ゆっくり…そう、その調子!」
「っあ、まだっ…離さないでぇ…っ!」
「叶音、それはワザとなのか?」
京都への出張から数日経ったある日
お馴染み研究室のドアが開き、聞こえた声に「へ?」と振り向くと、そこには眉間にシワを寄せた零が立っていた
オレは今、阿笠博士に作ってもらったローラーシューズの走行練習をしている
初めから1人でやってみるのは怖いなと思って風見に相手をしてもらってたんだけど、お願いしてみて正解
靴底がローラーになっていても立つことはできるが、体重移動で加速や減速をするこのローラーシューズでスピードの加減をしながら走行するのは思ったよりも難しい
どのくらい体重をかけて良いか、どうやって止まれば良いか、まずはそこからで、念の為と言ってヘルメットと膝当てを着用し、風見にはオレの片手を掴んで横に立ってもらっている
…そう、まるで一輪車の練習みたいな状態だ
「ワザとって?」
「無自覚か…」
ローラーシューズのスイッチを切りローラーの回転を止める
そして片手で両目を隠しながら溜め息をついた零に首を傾げると、風見は何かピンときたようだ
「も、申し訳ありませんっ!決してそういう風には捉えていませんから!」
「僕らと君の仲だから怒りはしないし事情もわかったら何も言わないが、たまたま廊下で聞いてしまった部下達の気持ちを考えてやってくれ」
そういう風ってどんな風?廊下で部下が聞いた?
と練習中の自分を思い返してみてなんとなくわかったから次第に顔が熱くなってくる
オレどんな声出してたんだろ…
「うぅ…恥ずかしい…」
「だから練習は僕が付き合うと言っただろ?」
両手で顔を隠していると頭の上に零の手が乗り、ワシャワシャと撫でられる
いつもの様に間に挟まれてしまった風見も苦笑いだ
「だって最近忙しそうだから、少しでも手を煩わせたくなくってさ…」
「風見だって忙しいんだぞ」
「いえ、自分は降谷さんが無茶しなければ通常業務のみなので」
風見の一言にジト目で見る零がおかしくてププッと笑ってしまった