第11章 紅の出張
萩が処理を担当した爆弾の事件にオレも関わっていて、あの日の事は今でもよく覚えてる
まだ交番勤務だったオレは爆弾が仕掛けられていたマンション付近の規制に借り出されていて、マンションへ突入する前の萩と会話を交わしていた
『萩、気を付けてね…』
『姫に心配してもらえるだなんて光栄だねぇ。ま、ちょちょっと片付けてくるから、処理が終わって犯人も捕まえたら飲みに行こうぜ!』
今思えばそれがフラグだったのかもしれない
規制線を張った一部で周囲の警戒を行っていると、後方上空からズドンと地響きが鳴る程の破裂音が聞こえた
まさかと思って振り返れば、萩が入ったマンションの上の方の階からモクモクと黒い煙が四方の窓を出口にして外へと吐き出されている
急な胸騒ぎにその場を他の警官に任せて機動隊の待機場所まで走った
そこには別の場所で爆弾の処理を済ませた陣平ちゃんが、携帯を片手にマンションを見上げていた
『じっ、陣平ちゃ…』
萩は、と聞こうと駆け寄ると、もうそんなことを聞かなくても陣平ちゃんの顔を見ればわかった
萩は爆発に巻き込まれ、萩と繋がっていたであろう陣平ちゃんの携帯からは応答が無くなっていた
全てを察した瞬間に膝に力が入らなくなり、その場に崩れた
その後は刑事や機動隊の補佐をして動いていたが、心はここにあらず、後はよく覚えていない…
「リュウ!」
「リュウさん!?」
零と風見に呼ばれハッと気が付くと、オレはどうやらボーッとしていたらしい
「大丈夫、何でもないよ!えっと、叶音さんのお話だったっけ?」
自分で自分の名前にさん付けするなんて違和感だなぁと思いながら話を戻そうとしたんだけど、零がそれをあまり好まなかったみたいで部下に注意を促す
「叶音とリュウは極秘でトレードしているんだ。他で名前を出すのは控えてもらいたい」
「も、もちろんです!その同期の奴にも何も言っていません!」
零の言葉はだいぶ優しかったが、目はとっても冷ややかだった
「少し前に叶音さんから連絡があってね、またみんなで飲みに行きたいからそれまで頑張れって言ってたよ!」
零の気持ちも分かるけど、なんだか部下が可哀想になってフォローを入れた
でもその言葉は自分に言った様なもので、今度はフラグにならないよう、元の姿に戻る為に頑張らなくちゃ…