第11章 紅の出張
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あれから何度か京都府警を含めた合同会議をし、バタバタと準備が進んでいった
オレは会議に出ることはできなかったけど、零が当日と同じ“公安の協力者”として変装で出席していつもの通信機で繋いでくれたから、それを研究室で聞いて内容は全て把握している
零はご要人に合わせて茶色のウィッグで髪色を変え、眼鏡を着用した
風見はサングラスと言っていたがご要人がサングラスは掛けないとかなんとかって色々あって眼鏡になったらしい…
そしてオレは髪色は変えなかったけど、前髪の分け目を変えたり、丁度伸びてきた頃だったので襟足を調える程度に髪を切ったりした
服はいいとこのお坊ちゃまが親の都合で社交場に連れて行かれた時の様なめかしこんだ服を着させられ、帽子に眼鏡でいつもと雰囲気を変える
「ちゃんとした服を着るとやっぱり雰囲気変わるな…」
「僕も、降谷でもなく安室でもなくって感じになっただろ?」
姿見を目の前に2人で色々な角度で自分達を見た
このくらい変わっていれば、どこかで…なんて言われても気のせいだと言って誤魔化せそうだ
「そうだ、訓練中は零の事なんて呼べばいい?」
「ご要人は英語圏だから…daddyとか、dadとかじゃないか?」
訓練中は英語で話さなきゃだから呼び方も英語か…
でも零に向かってdaddyとかなんだかちょっぴりむず痒い
「だ、だでい?」
「なんで平仮名表記で呼んだかな…」
おいおいと言った視線に苦笑いで返した
そんなこんなでオレ達は今、新幹線に乗っている
オレが窓際に座り、零は通路側、反対側には風見と部下2人が座る
周りは警護に選ばれた警官達が私服で席を埋めていて、何も知らない人から見ればなんの変わりもないいつもの車内だか、オレ達から見れば警察車両とでも名前を付けたくなる様な貸切状態だ
「Hey,daddy!Is that Mt. Fuji?」
「that's right!」
車窓から富士山が見えたのでちょっとはしゃいでみた
ご要人の息子さんは日本が初めてと言っていたので、きっと富士山に夢中になるかもしれない
なんてことを考えながら今日は一日過ごす様になるんだな……しかも極力英語で過ごすこと、だなんて言われてるからちょっと緊張する
もう少し気楽に行けるかなと思ったけど、大勢に見守られながらの旅行は全然気楽じゃない
仕事だから仕方ないけど…