第10章 ストラップの行方
比護選手に声を掛けられたことが余程嬉しかったのだろう、哀ちゃんの顔が恋する乙女の顔になっていて、いつものクールな感じはどこにもない
それを見たコナンもどこかホッとしているみたいなんだけど、この名探偵、また何かやらかしたのだろうか…?
「まぁ、その比護選手が試合に出てたらビッグは勝ったかもな!」
そしてなんの悪気もなく言った元太の言葉に、哀ちゃんはどんより、コナンは冷や汗……本当に何があったんだこの2人…
「そういえばその時の写真撮りましたから見せますね!」
光彦がポケットからスマホを取り出し、写真を見せてくれようとすると…
「録画中になってます!」
画面を覗かせてもらうとRECの赤い文字が表示されていて、録画時間が未だカウントされている
みんなが乗って帰って来た電車が米花駅で停車した時にその弾みで転んだらしく、ズボンの後ろポケットに入れていたスマホを落としていないか確認した光彦
その時にボタンを押したんじゃないかと冷静に自己分析している
「ズボンの後ろポケットなんかに入れとくからだよ」
「どーしてそんな所に入れてたの?」
「灰原さんがそうしてたから真似して…」
コナンと歩美ちゃんにそう言われ照れながらその理由を話してくれる光彦は、本当に哀ちゃんの事が好きなんだなって思った
「それで?哀ちゃんのスマホもポケットなんでしょ?みんなで転んだなら、哀ちゃんのスマホは無事?」
哀ちゃんのことだからきちんと確認はしているだろうと思ったけど、今日の哀ちゃんはどこかフワフワしたところもあるから、念の為に聞いてみた
「ええ、ちゃんとポケットに入って……あ…」
ポケットからスマホを取り出しながら、哀ちゃんの表情が固まった
どうした?と声を掛けようとすると、
「あーーーっ!?」
と悲鳴に似た大声を出したから驚いて肩が跳ねた
「ど、どうした灰原!?」
「な、なくなってるのよ…スマホに付けてた…比護さんのぬいぐるみストラップが!!!」
オレの代わりに尋ねてくれたコナンに哀ちゃんは答えながら目にじんわりと涙を浮かべ始める
哀ちゃんの持つスマホには確かにストラップが付いているが、その先にあったはずのぬいぐるみは付いていない
電車で転んだ時に先のぬいぐるみだけ取れてしまった可能性が高いな…