第2章 再び始まる
エレンの綴る想いはある日アルミンから聞いた壁の外にある、まだ見た事のない世界が綴られた本から始まった。
そしてその想いは未だ変わることもなく……。
「オレには夢がある…。巨人を駆逐してこの狭い壁内の世界を出たら…外の世界を探検するんだ」
しかし、この場でエレンに賛同する者はいなかった。
彼の演説は誰が聞いても無謀で希望の薄いものだ。
しかし彼の熱い闘志に突き動かされた物が少なくともこの場にいた事はまだ誰も知る由もない──。
「はッ!何言ってんだお前⁈めでたい頭してんのはお前の方じゃねぇか!」
「…なんだと‼︎」
「見ろよ!誰もお前に賛成なんかしねぇよ!」
エレンは周りの反応を見て黙りこくる。
その後エレナを見てから苛立ちを抑えるように目を閉じた。
「あぁ…エレナ以外"は"な。でももう分かったから…」
顔を怒りに染め、ヒートアップしたエレンとジャンは既に喧嘩を始める体勢に入っていた。
「さっさと行けよ内地に…。お前みてぇな敗北主義が最前線にいちゃあ士気に関わんだよ」
「勿論そのつもりだがお前こそ壁の外に行きてぇんだろ?さっさと行けよ、大好きな巨人がお前を待ってるぜ?」
両者の睨み合いが続く。
先程の淀んだ沈黙とは違い、渇いた緊張感が辺りを漂っていた。
今にも殴り合いを始めそうなエレンにエレナは弱々しく彼の服の裾を握った。
『エレンここで喧嘩はやめとこうよ…。キース教官に見つかったら怒られるよ…』
「エレナは黙ってろ…。これはオレにとって譲れないものだ」
エレンはエレナの方をチラリともせず、そう言い放った。
そんな二人を見てジャンはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる。
「あーあ…そういえばエレナも外に行きたいんだって?ほう…。双子揃って入団は巨人の餌希望かよ。はッ!ご苦労なこった」
「……。」
「まぁ、確かにコイツの気力の無さにはそれがピッタリかもな!エレナ、お前いつもエレンの意見に素直だがよ…お前には自分の意思ってもんがねぇのか?」
エレナを親指で軽く指差しながら馬鹿にした口調で言うジャンにエレンの顔はより怒りに染まった。
拳に血が滲む程強く握りしめる。