第7章 扉の向こうへ
大きく深呼吸をして扉をノックしようとした時、不意に扉が開いた。
扉を叩くはずだった手に引っ張られ、前に倒れそうになる。
そんなアリアを誰かが抱きしめた。
顔を見なくてもわかる。
イザークだ。
鼻の奥がツンとする。
二度と会えなくなる覚悟で別れたというのに、もう二度とこの腕に抱かれることがなかったのかと思うとゾッとする。
「アリア・・・・。」
イザークが力一杯抱きしめる。
その力の強さの分、愛されているのだとお思うと自然と頰がほころんだ。
「ごめんなさい・・・。」
「まったくだ、一人でなんでもしようとして・・。」
「わ、私だって!!」
思わず顔を上げるとそのまま顔を引き寄せられキスをされた。
そんな不意打ちに頭がおいつず、目をぱちくりさせてしまう。
そんな顔を嬉しそうに見つめるともう一度キスをする。
「んっ・・・ふっ・・」
酸素を求めてもがくとやっとイザークの唇が離れた。
真っ赤になって息を切らしているアリアにもう一度キスをしようとする。
「ま、待って・・・!だめ・・!!」
手でイザークの口元を抑える。
その手をイザークが優しく外す。
「何がダメなんだ?」
唇が触れそうな距離で囁かれる。
心臓が動くたびに彼の唇に触れそうになる。
「だって・・・、」
「だって?」
まるで弄ぶかのように意地の悪い顔をしている。
なのにどうしてか頰に熱が集まる。
「・・どうにかなってしまいそうだったんだもの・・・」
小さくもごもごと答えるとイザークがひたいを抑えるとはーっと長い溜息をつく。
「お前が悪いからな。」
いきなり乱暴になる口調に驚いているとそのままソファーに押し倒される。
ただの客間でベットはないからだ。
「い、イザーク!!」
アリアの制止を無視してワンピースのホックを外し、器用にくるみボタンまで外し始めた。
「だ、だめです!!」
「なんでだ?」
「まだ明るいし・・・、それに、ここで、その・・」
その恥ずかしがっている様子さえ楽しんでいるのだろう。
わかっているけれどどう反論していいのかわからない。
だんだんと涙目になってくると、流石にからかいすぎたと思ったのかイザークが焦りだした。
ボタンを戻し、目の縁にそっとキスを落とした。
その暖かな感触に一筋の涙を流した。