第1章 突然の指令
「ゲホっ!ごほっ!!げっ!!」
イザークが激しく咳き込む。ポケットからハンカチを出し口元を拭う。
「今なんと??」
「はい!!ぜひスカンジナビアの王女と結婚してみてはいかがかと!」
満面の笑みでラクスが提案する。一国家のトップとしてこれ以上頭の悪い提案はないのではないだろうか。どこからこの発想がくるのか。
「どうしてそんな結論になったんですか。」
なんとか平静を取り戻す。素晴らしいと認めつつも、どこかふわふわとしたつかみどころのない人物だと思っていたが、これは・・。
「ええ、プラントももっと地球側に歩み寄ろうとなりまして、そしたらちょうどスカンジナビアの国王から、娘の結婚相手を探しているというお話を聞きつけましたの。誰がふさわしいかという話をしたのですが、あなたが適任かと!」
ニコニコと、これ以上の名案はないと言ったような表情で喋るラクスと、「いいんじゃないかな、素晴らしいよ。」としか言わないキラ・ヤマト。これではイザークの部が悪い。
ディアッカは橋で笑いをこらえるのに必死だ。というか噴き出している。
「一体いつの時代の話ですか?そして、なぜ俺が適任だと?」
こみ上げる怒りをなんとか抑えながらもう一度問いかける。
「それは・・・。私の周りで信頼できる人の中で探したのですけれど・・。キラは私といますし、アスランも、その、だれかを思っているようですし、シンはルナマリアさんがいますし、ディアッカはー」
「もう結構です。」
だんだんと恥ずかしさが勝ってきた。つまり俺に浮いた話がないということを遠回しに言われているのだ。
ディアッカなんてもうお腹を抱えてヒーヒー笑っている。
「それほど強制力があるものではなくて、その、お見合いみたいなものでしょうか。このお話がどうなろうとお互い不利なことはありません。ただ、本当にどうかというだけですの。ですから、絶対結婚しなければならないというわけではありません。」
少しだけ申し訳なさそうにするラクスを、キラ・ヤマトは大丈夫だよと励ます。なぜお前が励ますのだ、そう言ってしまいたかったが、ラクスの前だ。
「ちなみにエザリア様の了承を得ています。」
どこまでも根回しバッチリな、天然のラクスであった。