第29章 地獄へ
「自分が何してるかわかってんのかよ!!?
こんな事して、ただで済むと思ってんのか!!」
「…さぁ。俺がこの先どうなるかなんて、どうだっていいよ。ところでなんで怒られてんの?俺」
「ッ!!」
鬱陶しそうに言うを睨む。
なぜ?お前はこんなことするやつじゃないだろ?何かの間違いだと言ってくれ。
「…ああ、隆くんひいちゃったのか。それはそうだよね、うん。
俺が怖いだろ。もう帰りなよ。
さようなら、"三ツ谷"くん」
わざとそう苗字で呼び、壁を隔てようとしているのを感じる。
もう君とはいられないんだよ、まるでそう言い聞かせるような瞳でオレを見たあと、やんわりと胸ぐらを掴むオレの手を解きその場から立ちさろうと踵をひるがえした。
違う、そうじゃねえよ。馬鹿野郎。
「………へ?」
前に進もうとしたを、強引に後ろから抱きしめる。
腕に収まるこの華奢な肩は、薄い体は、なんて小さい。
触れたことで返り血がオレにも付着したが、そんなのはどうでもいい。
「………愛してる、」
大丈夫だ、もし世界の全てがお前の敵になっても、オレは変わらず愛している。
その想いをのせて、耳元で優しく囁く。
背後で、爆発音が鳴り響きより一層建物が激しく燃え上がる。
「帰るぞ」
の細い手首を掴み、バイクの後ろ乗せた。
その日はの家に泊まる事にした。
風呂で体を清めて、やっと綺麗になった。
のTシャツを借りようとしたが小さくてとてもじゃないが着られない。
部屋着の下(ウエストがゴムなのでギリギリ着れた)だけを借り、上は着るのを諦めた。
「さっき兄貴の仇だって言ってたけど、お前が殺したの、1人か?」
「ううん、60人」
「…………………は?」
「多分、漏れがなければ全員やったよ」
あの炎の中に60人もいたと言うのか。
相手はチンピラでも暴走族でもない、本物のヤクザだ。それをたった一人、一晩で全員殺害?どうやって?
「…これから…どうするんだ」
「どうもしないよ、どうにかなるから」
「…どういう事だ?」