第29章 地獄へ
『がいなくなった!そっちに来てないか!?』
中学を卒業してすぐの事だった。
九条から珍しく電話が来たので出ると、聞いたこともないような切羽詰まった声で尋ねてきた。
嫌な予感がして、
オレはすぐさまバイクを走らせ探し回った。
気づいたらまったく見覚えのない、既に廃墟と化した工場にいた。
何故ここにたどり着いたか自分でもわからない。
到着するや否や、凄まじい爆発音と共に建物が炎に包まれ激しく燃え上がった。
反射的に腕を上げ顔を守る。
少しすると、遠くから鼻歌が聴こえた。
腕の下から様子を伺う。
目を凝らしてみると、爆炎の中から人が出てきた。
手には刀を握り、遠目でも分かるほど全身が血の色に染まっている。
明らかにヤバい。
オレが経験してきた、暴走族同士の抗争とか、そんな次元の話じゃない。
―――今すぐ逃げないと殺される。
急いでその場を去ろうとした。
が、その人物が近づいてくるにつれ鼻歌が鮮明に耳に入り、足が止まる。
オレは、この声を知っている。
「〜♪幸せなら手を叩こ〜♪
……あれ、隆くん。偶然だね!どうしたの?」
嘘だ。
これは悪い夢だ。
「お前………何して……」
なんとか絞り出した声は、酷く掠れていた。
「え?何って、お仕置だよ。
悪いやつは誰かが裁かなきゃいけないだろ?」
何を言っているの隆くん、当たり前じゃん。
そう言いたげな様子で、さも当然のように答えた。
「…ッ、お前ッ…!!」
「やっとだ。やっと殺せた。ずっとこうしたかった!兄貴、見てるかな?
そうだ、あの太陽みたいな笑顔で…俺を褒めてくれると思う?」
血に濡れた刀を払い、血を振り落としながらオレに語りかける。
さっきまで恐怖の感情に包まれていたのに、瞬間的に頭がカッとなるような怒りを覚えた。
に近寄り、胸ぐらを掴みあげる。