第28章 同じ想い
あの日、さんと身体を重ねた日から
オレ達の距離は一気に近づいた、気がする。
「今日バイト休みなんだっけ?」
「はい。さん動物好きですか?」
「好きだよ!ねぇねぇ猫カフェいかない?」
「はは、いいですよ。行きましょうか」
ただでさえ仕事で動物と触れ合っているのに、休みの日にも触れ合うとは。と内心思いつつ、ウキウキしてるさんがかわいいのであっさり了承した。
『松野、もうに近づくな。あいつはカタギの人間が関わっていいやつじゃない。』
いつか雪村さんに言われた言葉が頭をよぎる。
「どうしたの?俺の顔ジロジロみて」
「え!あ、いや、なんでもないです」
「最近ぼーっとしてばっかり。俺といるのにさぁ」
「すみません」
「で、猫カフェどこにあるの!」
「ああ、それなら知ってるとこありますよ」
じゃあ、行きましょうかと手を差し出すと、照れたように微笑んで手を握ってきた。
愛おしい、この人を守りたい。
『ゴリの件の時から危うかったけど、あいつはとうとう手出しちゃいけないとこに手出して、その上ぶっ潰した。ヤクザの世界でを知らねえやつはいない。
もう、暴走族の世界とは違う次元にいんだよ。
今DES・Rowに残ってるやつは全員、どんな拷問を受けても口を割らないで死ねる覚悟があるやつだけだ。
松野、お前にその覚悟があるか?』
『…オレは』
『お前のために言ってるんだよ。
松野には松野の未来がある。俺らには、もう明るい未来なんてない。
特には…あいつの行き先は、地獄だ。』
『雪村さん、その時は―――』
「ッかわいい〜!この子モカちゃんっていうんだねぇ」
そっと猫に触れようと手を差し出す。
「っいた」
「さん!」
「あっ、お客様大丈夫ですか!?」
その猫は、さんが触れようとした手を引っ掻いた後逃げるように飛び跳ね、シャーシャーと逆毛を立てて怯えたように威嚇した。
「すみません…!うちで一番大人しい子なのですが…!」
「ふふ、構いませんよ。そういう時もありますよね」
そう笑いかけたあと、目だけで猫をみやった。
否、笑っていない。
その目をみて、身体が凍りついた。
『雪村さん、その時は、オレはあの人と一緒に地獄に落ちますよ』