第28章 同じ想い
「……千冬、さんって、あんなだったっけ」
「……まぁ、そりゃ人殺したら変わるだろ」
「…………え?」
人を、殺した?
「なに初めて知ったみたいな顔してんだ……って、そうか、お前未来いたんだもんな」
「ど、どういう事だよ!人殺したって…!」
「さん、お兄さんの仇を討ったんだよ」
さんは中学を卒業後、お兄さんを殺したヤクザ一派を突き止め一人で皆殺しにし建物を放火した。
仇討ちとはいえ多くの人を殺めたにもかかわらず、刑務所には入らなかった。
その背景には膨大な金銭が絡んでいるという。
「鼻歌歌いながら殺してたって、三ツ谷君が言ってた」
『〜♪幸せなら手を叩こ〜♪……あれ、隆くん。偶然だね!どうしたの?』
『お前………何して……』
『え?何って、お仕置だよ。
悪いやつは誰かが裁かなきゃいけないだろ?』
燃え盛る炎の中、刀についた血を振り落としながら微笑むさんはそう言ったと、三ツ谷くんが話していたという。
「…千冬、大丈夫なのかよ」
「大丈夫って、何が」
「いや、その……」
好きな人が殺しに手を染めたと知ったのなら、強いショックを受けたはずだ。
「………まぁ、そりゃビビったぜ。悲しかった。
でも、二人でいる時とかはさ、やっぱいつも通りのさんなんだ。
小さくて、可愛くて無邪気で……守りたい。
タケミっち、お前と同じようにオレにも絶対に守りたい人がいるんだよ」
そういってオレを真っ直ぐ見据える瞳には、確固たる意思があった。
「オレは、オレのやり方でさんを守る。そして、オレもさんの未来を変える」