第27章 篝火
いつもの廃ビルの一室に到着した。
「あ!いらっしゃい」
そういっていつもの柔らかい笑みを浮かべ、デスクに座りながらヒラヒラと手を振るさんにホッとする。
部屋には九条さんと、デス・ロウNO.4の岩淵さんがいた。
身長が2mあるらしいが、本当にデカい。
壁みたいだ。
「冷蔵庫から好きな飲み物とってっていいからね〜」
「すみません、ありがとうございます」
お言葉に甘えて、千冬はカルピスを、オレはコーラを選んで中央のソファーに座った。
さんは両肘をついてふわりと微笑む。
「ねーねー、2人とも同じ学校なんでしょ?いいなぁ、楽しそう」
「はは、じゃあさんもうちの学校どうっすか?」
「いったって同じクラスなれないもん。留年しよっかなぁ」
「バカ」
「いてっ」
九条さんが軽くさんを小突く。
一瞬だが、留年という言葉に千冬の顔に影が落ちたような気がした。
かつて追いかけていたあの背中を、今も慕っているのだろう。
「そういえば、今日なんで急に呼んだんすか?」
「ああ、それはね」
にっこりといつもの人の良い笑顔を浮かべたまま、席を立つ。
さんが立ち上がるのと同時に岩淵さんが部屋の扉の前に立った。
「みて、これ。かっこいいでしょ?」
そういってさんが何かを取りだした。
それは、柄も鞘も真っ白な日本刀だった。
「新調したんだ。できたてホヤホヤだよ」
「え、それって…ホンモノ…?」
「何言ってんの、当たり前じゃん」
鞘から刀身を抜き、オレの首元に突きつける。
「花垣武道、今すぐ床に跪け」
場の空気が凍りつく。
「え……」
「さん!流石にふざけすぎです、やめてください!」
「黙れ」
睨んで千冬に吐き捨てる。
普段どれだけ柔らかい笑みを浮かべていても、優しい声で言葉を紡いでいても、その人は東京最強と謳われる男だ。
その上、側近にはドラケン君以上の実力と言われる九条さんに、身長2mの岩渕さん。
抵抗して勝てるわけが無い。
オレは言う通りに床に跪いた。
何だこれ。オレ、ここで死ぬのか?
冷や汗が止まらない、恐怖で全身が震えた。