第26章 慟哭
さんの家につき、ケーキを食べてゆっくりした後、二人で晩飯を作った。
今は丁度、晩飯を食べ終わったところだ。
夜はポークカレーが食べたいと言ったので、キッチンで二人ならんで作業した。
もしこの人と付き合って一緒に暮らしたら、毎日こんな風にすごせるんだろう。
願わくばオレがその相手になりたい。
でも、もしその相手がオレ以外の誰かだったら、九条さんや三ツ谷くんだったら、と勝手に想像して考え込んで深く傷ついた。
「ちふゆー…」
「え!あ、はい、なんですか?」
名前を呼ばれ、ハッとする。
「なんですかっていうかさぁ、ボーッとしすぎじゃない?なんか考えてたんでしょ」
「………」
「どうしたの、言ってみなよ。なんでも聞いてあげるから」
この人は簡単にそう言う。
誰のお陰で自分がこんなに悩み苦しんでるのか、この人はわかっていないのだろうか。
ならば望み通り言ってやればいい。
「………あなたが」
「ん?」
「あなたが、わからない。
誰にもでも気がある素振りをして。
オレの気持ちだって知ってるくせに。
あなたが好きな人って、結局誰なんですか?」
まったく予想していなかったのだろう、オレの言葉に目に見えて動揺するさんの姿に無性にイライラしてしまう。
「…………誰、って。俺は、みんな大切な」
「っそういうこと聞いてんじゃねえよ!!」
思わず机を殴りつける。
ドンッ!というすごい音と、机の上に置いてある食器がガシャンと揺れる音がした。
机を挟んだ向かい側に座るさんの目が、驚きで見開かれる。
「アンタが一番好きなの、九条さんなんじゃないですか?」
「!り、凛は、家族だって言っただろ」
「ハッ、しょうもねえ嘘ついてんじゃねえよ」
「…っ、、何キレてんのか知らないけどさ、態度悪くない?普通にムカつくんだけど」
さんが立ち上がり、苛立ちを隠さないままオレの横に立った。上から見下ろされるのに腹がって立ち上がると、今度はオレが見下ろす形になった。
「オレの質問は?答えられねーのかよ」
「なんで答えなきゃいけねえんだよ」
「そういうのいいから、答えろよ。アンタが好きなの九条さんなんだろ?
どうせ、九条さんと付き合えねえから他のやつに手出してんだろ。アンタいい加減だもんな」
「ッ!」