第21章 刹那
ネクタイが解かれると、縛られた部分が赤くなっていた。
万次郎は早々に服を整え、ティッシュの箱をソファに投げるようい置いた。自分で後処理しろということだろう。
自分の臀に指を突っ込んで掻き出したあと、服を着てソファに飛び散った精液を拭う。ついでにファブリーズもした。
結局万次郎ともセックスをしてしまった。
だけど、心は満たされなかった。
「…随分乱暴に抱くよね」
「お前バカだからな」
「あ、そ……」
胸がキュッと苦しくなる。
俺はわがままだ。愛されることが怖いのに、愛されないのは辛いと思う。
「お前そんな敏感な体じゃ女なんか抱けねえだろ」
「……るさい、関係ないだろ…」
万次郎は前、俺に愛してると言った。
でもその言葉が嘘みたいに、俺が傷つくような事ばかりして、酷い言葉を浴びせてくる。
「……」
「…………」
もう喋りたくないし、何も聞きたくない。
下を向いて黙っていると、優しく頬に手が触れた。
優しく頬を撫でた手は、顎をもって上にクィっと上げて、そのままキスをしてきた。
深いけど、優しい、啄むようなキス。
少し離れては、また唇をつけて、何度も何度もキスをした。
「っ…はぁ…」
「、好きだ」
「嘘だ」
「嘘じゃねえよ」
「じゃあ、なんであんな」
「お前がバカでビッチだから。治せよ、そういうとこ。
寂しいならオレがずっと傍にいてやる。
だからもう簡単に他のやつのところフラフラすんな」
いつになく真剣な顔で言われて、
少し、その言葉を信じてみたいと思ってしまった。
東京で最強と謳われる男が二人。
どっちが強いかを語る不良達は、その二人がたった今しがた体を重ねていたことを誰も知らない。